第3回座談会

2016年5月27日

場所:早稲田大学

ゲストスピーカー:竹峰 誠一郎氏

 

ゲスト プロフィール

1977年兵庫県生まれ。早稲田大学大学院、三重大学研究員などを経て、現在明星大学人間社会学科教員。博士(学術)。和光大学4年の時からマーシャル諸島に通い始め、米核実験の「その後」を追う調査を一貫して積み重ねる。グローバルヒバクシャを提唱し、同研究会を創設。共同代表の一人。近年は、福島や旧ソ連の核被害地にも調査範囲を広げ、被爆者の未来をどう拓くのかに関心を持つ。日本平和学会理事、ピースデポ理事、「原爆の図」丸木美術館評議員、第五福竜丸平和協会専門委員などを務める。単著『マーシャル諸島終わりなき核被害を生きる』(新泉社、2015年)、共著『各時代のマーシャル諸島―社会・文化・歴史、そしてヒバクシャ』(凱風社、2013年)など。

トークセッション「マーシャルから学ぶー終わりなき核被害を生きるー」(第3回座談会)を2016年5月27日(金)早稲田大学にて開催いたしました。ゲストスピーカーとして日本有数のマーシャル諸島研究者のお一人である、明星大学教授 竹峰 誠一郎氏をお招きしました。

 

トークセッションは第一部 竹峰先生による講義、第二部 フロアからの質疑応答、第三部 グループディスカッションの三部構成で行われました。

 

 まず第一部では竹峰先生から、マーシャル諸島共和国の概要と核実験の経緯、そしてその中で生き抜いたマーシャルの人々についての講義をしていただきました。

 竹峰先生ははじめに、「平和学」を学ぶ上で大国間の動きのみならず、辺境に目を向ける「虫の目」「アリの目」を持つ重要さを述べられ、その方法としてグローバルヒバクシャの概念をご説明いただきました。グローバルヒバクシャとは、原爆投下で直接的に被ばくした広島・長崎の人々のみが被爆者なのではなく、原子力発電所の事故や原水爆実験によって被ばくした人も被曝者と考え、それらの人々はつながっている、という概念です。

 アメリカがマーシャル諸島で行った原水爆の経緯を説明する場面では、原水爆実験が多く行われたビキニ環礁の人々がいまだに自分の生まれた場所、故郷に帰れない状況や、彼らと土地とのつながりの強さについて説明され、これからの生活の改善の重要性を指摘されました。

 さらにこういった悲しみの歴史を辿ってきたマーシャル諸島の人々が、"Victim"としてでなく"Survivors"として生きているおり、現在アメリカの市民社会にからの支援なども受け、核保有国に対して訴訟を起こし、自分たちが経験した悲惨な歴史を繰り返さぬよう訴えるマーシャルの人々の姿を説明してくださいました。

 

 第二部では竹峰先生への質疑の場が設けられ、マーシャル諸島のような小国がアメリカのような大国に講義するにはどうしたらよいのか、そして竹峰先生自身の研究の出発点はどこかなどの質問が出ました。

 

 第三部では5~6人のグループに分かれディスカッションを行いました。テーマは「安全保障とは何か」。答えのないテーマであり、参加者の議論は白熱したものとなりました。最後に竹峰先生から今回のトークセッションのまとめがあり、これから平和学を勉強していくにあたり、「誰のための安全保障であるのか?」「安全保障=善なのか?」「議論をする際には安全保障や国防などの政策決定のプロセスに目を向ける」などを考える必要がある、とアドバイスをいただきました。そして、マーシャル諸島問題の問題は彼らの問題のみならず、私たちの問題であるということを改めて感じました。

 

 

今回のトークセッションは、安全保障の在り方や大国主義について学び、考える貴重な機会となりました。参加者同士が意見を交わし、これからの問題について理解を深めるトークセッションであれば幸いです。本トークセッション「マーシャルから学ぶー終わりなき核被害を生きるー」にお越しいただきました皆様に御礼申し上げます。ありがとうございました。