第10回交流会

2016年8月26日(金)

場所新宿平和祈念展示資料館

 

[ 当日のスケジュール ]

13:00 入館・解説員の方より資料館案内

14:00 語り部・加藤正喜さんによるお話し会 「平壌での集団避難生活」

15:00 館内自由見学

16:00 館内上映会 「悲劇の労苦の地・樺太」

16:30 解散・茶話会 

 

夏休み期間第一回目の企画は、826日新宿駅から徒歩約5分にある「新宿平和祈念展示資料館」に訪れました。本資料館は、兵士・戦後強制抑留者・海外からの引揚者という三つの労苦を扱う施設であり、館内には関係者の労苦を物語る実物資料や写真、映像資料、ジオラマなどが展示されていました。また、館内のイベントスペースでは、定期的にビデオシアター上映や語り部さんによるお話し会が行われており、特に8月は夏休み期間ということもあり、連日のようにイベントが開催されていました。 

 

 入館してまず始めに、解説員の世古さんによる解説の下で館内の見学を行いました。館内は、兵士・戦後強制抑留者・海外からの引揚者の三つの労苦についてエリア別に展示されており、貴重な実物資料や当時の写真などが非常に目を引きました。展示物脇にある説明に加え、世古さんによる当時の詳細な解説を受け、参加者の皆さんが興味深く耳を傾けている様子が伺えました。

 14時より、加藤正喜さんによる語り部お話し会「平壌での集団避難生活」に参加しました。加藤さんは、昭和18(1943)年父の関東軍配属に伴い満州に移住、終戦間際に平壌へ移動の後、集団避難生活をされた体験をお話しくださいました。そこでの生活は非常に貧しく、加藤さんら日本人は遊郭として使われていた長屋造りの住居に息をひそめるように住んでいたと言います。女たちが職にありつけることはなく、当時まだ幼かった加藤さんが傷病者らの看護の手伝いをするなどして得た食糧が、加藤さん家族の養いになっていたこともあったそうです。貧困は食糧不足だけでなく健康被害をも及ぼします。集団避難生活では一年近く風呂に入ることができなかったと言います。そのような生活が続くと、身体中にノミが繁殖し様々な感染症を引き起こす恐れがあります。着ている服がノミだらけになってしまった時には、熱湯のはいった鉄のドラム缶にそれらの服を入れてノミを除去し、その間は皆裸で過ごすしかなかったというお話もありました。また、年頃の少女らは軍人らに見つかると手酷い仕打ちに合うために長屋造りの住居に籠るのが常で、時折軍人らが暇を見て訪れると、互いに合図をして女たちを匿っていたそうです。このように、生々しく語られる幼少期の体験談は、実際に戦争を肌身に感じたものでなければ表現し得ぬような貴重なお話でした。

 館内の自由見学の後、上映会「悲劇の労苦の地・樺太」を鑑賞しました。こちらの映像作品では、日ロ両大国の対立に翻弄された樺太の戦時下の様子などを紹介するものでした。樺太からの海外引揚者らに焦点を当て、彼らの証言や当時の状況が克明に描かれていました。

 先の大戦における我が国の歩みについては、歴史の授業において、また修学旅行などで広島や長崎の原爆資料館へ訪れるなど、義務教育の過程に学ぶ機会が取り入れられています。しかし、本資料館に展示されているような兵士・戦後強制抑留者・海外からの引揚者の労苦に触れることは数多くありません。今回の資料館見学では、先の大戦を単なる歴史の概略としてだけでなく、「人類が再び過ちを犯さないために語り継がれるべき物語」としても、参加者それぞれが得た学びを持ち帰ることができたのではないでしょうか。

 

 その後の茶話会では、本資料館見学の感想から、関連する時事問題の話まで、今回初めて参加してくださった方も含め賑やかに談笑しました。参加なさった方や運営メンバー自身の将来の話など、同期の友人や同じ学部の部活やサークルでは普段話すことのない話題も自然と口からこぼれてしまうのが茶話会の醍醐味であると思います。

 大変限られた時間ではありましたが、本イベントが皆さまにとって先の大戦について理解を深め、平和のあり方について考える一助となりましたら幸いです。